神亀酒造のご紹介
神亀さんに関しては、私なんぞがここで改めてご紹介するまでもないでしょうが、私にとって神亀の専務はお酒の先生の一人なので、個人的なことですが、私と神亀さんの思い出をお話しましょう。
惰性で酒屋をやっていた私にとって、吟醸酒との出会いは衝撃的でした。しかし、自分がおいしいと思えるお酒を探していても、なかなか基準が分からない。なんか大きな森の中をさまよっているような時に出会ったのが神亀さんでした。平成2年頃だったでしょうか。神亀さんが『夏子の酒』で紹介された頃かもしれません。
ある方の紹介で冬、神亀さんに行くと、あの専務が蔵の片隅に置いてある、ほこりを被ったお酒(「純米大吟醸」というラベルが貼ってある)を、ぽんぽんと開けて飲ませてくれたのはいいのですが、ゴッつい酸と老ね香がすごくて、正直、あまりおいしいとは思いませんでした。それまでは、香り高い吟醸酒ばかりを探していたので、「なんだこれ? これ、おいしいの?」と思いました。(専務、ごめん)
それに蔵も薮の中にあるし、普通、白壁のきれいな所にあるんじゃないの? 酒蔵って、と思ってました。(専務、本当にごめん)
そんな時、かの専務は、「うちの〔純米)大吟醸はお燗にするとゴルゴンゾラチーズと良く合う」なんぞと言い出したんです。
はあ? ゴルゴンゾラチーズ? お燗? 大吟醸をお燗だあ!? 何考えてるんだ、この人は。(そういや、この時には竹鶴の石川杜氏にも会っているんですよね、神亀さんで。神亀の蔵人さんでしたけど、この時は)
と、ストーブの上に乗せてある薬罐の中に、かの純米大吟醸を徳利に入れてお燗しだしたのです。
「う〜ん、この温度なら1分くらいかな・・・」などと、時計を見ながら、さっと徳利を持ち上げて
「うん、いいだろ。どうぞ」と、そのお燗された純米大吟醸を盃に注いでくれました。
は〜、まあ連れてきてくれた人の手前、しょうがないけど飲むか・・・と一口。
それは物凄い衝撃でした。えっ、何これ? さっきまでの老ね香もないし、冷やのままだと飲みにくかった酸がとってもまろやかになっている。これなら下手なワインなんざ足下にも及ばない。これは凄い!!
んっ、もしかしたら、このオジさん(専務のこと)とっても凄い人なんじゃなかろうか・・・
それから、専務に嫌がられながらも蔵に押しかけては色々とお酒のことを教えてもらいました。
そして、翌年には神亀さんで『ここに美酒あり・後編』を出版された箕浦淳一氏に出会い、さらには上原先生に出会い、私は純米酒にひた走るようになってしまったわけです。
こうして、不幸な酒屋の一丁上がりです。神亀〜上原ラインでお酒の基準が出来上がってしまった私は、もう香り高いアル添の吟醸酒には戻れませんでした。
こんな私が探してくるお酒は、ほとんど無名の銘柄ばっかり。お店に並べておいても、誰も見向きもしませんでした。
そんな私の大恩人です、神亀さんは。
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