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神亀酒造(埼玉県)

神亀酒造の純米酒紹介

神亀さんの「ひこ孫」は3年古酒です。ですので、けっこう色づいています。山吹色、というほどではありませんが、けっこう色がついてます。
しかし、それこそがきっちりと熟成された証拠。炭なんぞでいらっていない証拠です。

そして、いつのまにか、お米が山田錦になってました。(値段は変わらず)さらに!! 精米歩合も5%上がっていました。今まで、私は五百万石の60%だと聞かされていたのですが、いつのまにか山田錦の55%精白になってました。

神亀さんって、こういうことをあまり話さないのです。(神亀の専務曰く「お前が何も聞かないから、喋らないんだ」って。おいおい、そういう問題かよ)
何も言わずに、ひそかにグレードを上げている神亀さん。う~ん、しぶいぜ!!
で、味は、これまた驚くほど、奇麗になって旨味、膨らみともに申し分ない。でも、やはり、これは燗向きのお酒でしょう。もちろん、冷やで飲んでもいっこうに構わないのですが、お燗を飲むと、このお酒を冷やで飲むのがバカらしく思えてきます。

以前の、もっとごっつい神亀が好きだった人は、今の神亀は奇麗になりすぎている、という人もいらっしゃいますが、やはり、この味は神亀さんでしか出しえない味わいだと思います。

神亀酒造の純米酒はこちらでご購入できます。

 

神亀酒造の酒蔵訪問1

神亀さんに関しては、私なんぞがここで改めてご紹介するまでもないでしょうが、私にとって神亀の専務はお酒の先生の一人なので、個人的なことですが、私と神亀さんの思い出をお話しましょう。

惰性で酒屋をやっていた私にとって、吟醸酒との出会いは衝撃的でした。しかし、自分がおいしいと思えるお酒を探していても、なかなか基準が分からない。なんか大きな森の中をさまよっているような時に出会ったのが神亀さんでした。平成2年頃だったでしょうか。神亀さんが『夏子の酒』で紹介された頃かもしれません。

ある方の紹介で冬、神亀さんに行くと、あの専務が蔵の片隅に置いてある、ほこりを被ったお酒(「純米大吟醸」というラベルが貼ってある)を、ぽんぽんと開けて飲ませてくれたのはいいのですが、ゴッつい酸と老ね香がすごくて、正直、あまりおいしいとは思いませんでした。それまでは、香り高い吟醸酒ばかりを探していたので、「なんだこれ? これ、おいしいの?」と思いました。(専務、ごめん)
それに蔵も薮の中にあるし、普通、白壁のきれいな所にあるんじゃないの? 酒蔵って、と思ってました。(専務、本当にごめん)

そんな時、かの専務は、「うちの〔純米)大吟醸はお燗にするとゴルゴンゾラチーズと良く合う」なんぞと言い出したんです。

はあ? ゴルゴンゾラチーズ? お燗? 大吟醸をお燗だあ!? 何考えてるんだ、この人は。(そういや、この時には竹鶴の石川杜氏にも会っているんですよね、神亀さんで。神亀の蔵人さんでしたけど、この時は)
と、ストーブの上に乗せてある薬罐の中に、かの純米大吟醸を徳利に入れてお燗しだしたのです。

「う~ん、この温度なら1分くらいかな・・・」などと、時計を見ながら、さっと徳利を持ち上げて
「うん、いいだろ。どうぞ」と、そのお燗された純米大吟醸を盃に注いでくれました。
は~、まあ連れてきてくれた人の手前、しょうがないけど飲むか・・・と一口。
それは物凄い衝撃でした。えっ、何これ? さっきまでの老ね香もないし、冷やのままだと飲みにくかった酸がとってもまろやかになっている。これなら下手なワインなんざ足下にも及ばない。これは凄い!!
んっ、もしかしたら、このオジさん(専務のこと)とっても凄い人なんじゃなかろうか・・・

それから、専務に嫌がられながらも蔵に押しかけては色々とお酒のことを教えてもらいました。
そして、翌年には神亀さんで『ここに美酒あり・後編』を出版された箕浦淳一氏に出会い、さらには上原先生に出会い、私は純米酒にひた走るようになってしまったわけです。
こうして、不幸な酒屋の一丁上がりです。神亀~上原ラインでお酒の基準が出来上がってしまった私は、もう香り高いアル添の吟醸酒には戻れませんでした。

こんな私が探してくるお酒は、ほとんど無名の銘柄ばっかり。お店に並べておいても、誰も見向きもしませんでした。
そんな私の大恩人です、神亀さんは。

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神亀酒造の酒蔵訪問2

地元埼玉の誇る銘酒神亀。全国で初めて全量純米を達成した、その勇気と偉業に追随しようとしている酒蔵が、やっと全国でも出てこようとしています。

そして、実際、神亀さんの援助を受けて、全量純米に切り替わった酒蔵もあります。

しかし、神亀の味わいは、けっしてきれいな、万人に受け入れられやすい味わいではありません。特にレギュラーの「神亀辛口純米」は、その独特の酸と味幅から、評価は大きく分かれると思います。

ただ、これだけが神亀ではないのが、ここの懐の深さでしょう。発泡性のにごり酒から甘口の純米酒まで、様々なラインナップのお酒があります。

そのどれもが、個性あふれる味わいでありながらも、通底している神亀ならではの味わい。造り手としては、お燗をして料理と一緒に味わうのを前提にされていますし、確かにお酒だけを飲むより、料理を食べながら飲みたくなるような味わいです。

またここは、若い蔵人さんが多いのも特徴です。専務は「昔は大手の酒蔵が蔵人や杜氏を育ててくれたけど、今じゃうちみたいなところが育てなきゃなんないから」とおっしゃっています。

それも、機械がすればいい仕事は機械を導入するけれど、人間の手の感触が必要な箇所は、機械を入れずに、きちんと経験を積めるような仕組みになっているところがすごい。

お酒を造る工程の麹米を造る箇所では、昔ながらの、蓋麹と言われる小さな道具を使い、手間と時間のかかる製法で全ての麹米を造らせる。この経験が若い蔵人を育てるのでしょう。

ここの卒業生の一人に、「竹鶴」の石川杜氏がいらっしゃいますが、その詳しい話は、竹鶴でお話いたしましょう。

それと、もう一つ。神亀さんが力を入れてらっしゃるのは、農家さんの援助ではないでしょうか。千葉県の成田や鳥取。または徳島県の篤農家さんを援助されて、極上の酒米(山田錦や五百万石など)を栽培してもらい、また神亀さんだけでなく、志を同じくする酒蔵さんにも提供されています。『醸は農なり』という言葉がありますが、まさにそれ。人の口に入るものですし、昔の杜氏や蔵人は、酒造り以外の時期はお百姓さんとしてお米などの農作物を作ってらしたのです。

そんな神亀さんですが、「天は二物を与えず」という言葉通り、酒造りに関しては申し分無いのですが・・・事務に関しては、ちょっと・・・

当店からは車で30分程度なので、欲しいお酒があると電話してから蔵に出向くのですが、電話に出るのが専務だと、後でちょっと困ったことになりがちです。

専務がそのまま蔵にいらっしゃる場合は問題無いのですが、なにしろ忙しい方なので出かけられることが多いのです。電話を受けた後で専務が出かけられた場合、この注文の引き継ぎを期待してはいけません。

蔵に入って「こんちわ~」と言うと、事務員のMさんが、「あら~? 池田屋さ~ん今日はな~に~?」と言われます。

「えっ? さっき専務に注文しておいたんですけど・・・」

と、事務員Mさんと、専務のお嬢さんが口を揃えて、

「あら~っ! 専務は駄目よ~!」ということで、最初から注文のし直しとなります。

そんなお茶目な神亀さんですが、ここ数年の味の進化、深化には目をみはるものがあります。

神亀らしい、グッとくる旨味はそのままでも、年々、味がきれいになってきているようです。中には、以前の神亀のような垢抜けない香味のものもありますが(決して貶めた表現のつもりではありません。神亀ならではの個性を表現したいのです)、全体的には非常に透明感のあるきれいな味わいになってきているようです。

先日、専務と一緒に飲んだ時に、ちらっと専務がおっしゃった言葉が印象的でした。

「やっと最近、若い衆が、俺がやりたいことを理解してくれるようになったんだよ。10年近くかかったよ」

さて、これからの神亀がどのような方向に向かっていくのか。それは私にも分かりません。おそらくそれを全て把握しているのは、お茶目な専務だけかもしれません。

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