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睡龍 久保本家(奈良県)

睡龍 久保本家の酒蔵訪問

久保本家さんは、奈良県の大宇陀という地にあります。
近鉄の榛原駅から車で20分くらいでしょうか。蔵の前の道は昔は重要な街道 だったということです。
昔からの家も多く、数百年続いているところもあるそうです。
なので、久保さんも江戸時代から続いているのですが、まだこの地では新参者なんだそうです。

ここに加藤杜氏が赴任してきたのは平成15年。
あちこちの蔵を巡り、自分が安心して飲める酒を造りたい、という切実な思いを実現するためにこの久保本家さんにたどり着きました。
ここに至るまでには、福岡、埼玉、三重、鳥取と酒蔵を巡りました。

ちょうど、加藤杜氏がここを訪ねた時は、蔵元の方も世代交代の時でした。
それまで銀行にお勤めだった順平さんが蔵に戻ってきた、ちょうどその時に、加藤杜氏を迎えられました。

ただ、加藤杜氏が赴任するにあたって蔵元さんに約束させたことがあります。
それは、好きな酒を好きなだけ飲んで良い。給料とは別に。
おそらく蔵元さんとしては軽い気持ちで受けたのでしょう。しかし、この約束は、後に蔵元さんの顔色を青くすることになったのでした。
杜氏、蔵人たちが飲むのは、ほとんどが「生酛のどぶ」これを一晩で2~3本消費するのです。それも毎晩。

その上、この蔵のみなさんと私の好みは似ているらしく、よく同じタンクのどぶとバッティングします。
こちらとしては多めにもらいたいので、ある程度の数を予約しておくのですが、ちょうど蔵人さんもそのタンクのお酒が飲みたいらしく、「これは池田屋さんの予約分だから」と引き留められて渋々諦めることもしばしばあります。

そんな杜氏と蔵人たちが造るお酒は、とにかく力強い。とてもとても新酒では味が乗ってきません。
どぶだけはにごり部分の口当たりの柔らかさがあるために、さほど堅さを感じさせませんが、特に生酛系のお酒は新酒の時には飲めません。
数年、ものによっては10年以上の熟成期間が必要なのではないでしょうか。
なので、私などは栓を開けて一ヶ月前後、室内にほったらかしにしておきます。
これを熱めの温度にお燗すると、なんとも言えない旨みが口の中いっぱいに広がります。

こんな力強いお酒を造る秘訣は、やはり生酛造りにありそうです。
加藤杜氏は、大七の故伊藤杜氏の最晩年に生酛造りのキモを伝授されたらしいのですが、それに彼ならではの創意工夫を加えた造りをされているようです。
彼が赴任した年か、その翌年だったかは忘れてしまいましたが、県の鑑定の先生が巡回で久保本家さんにこられた時に調べてみたら、通常の1割ほどしか酵母がいなかったのに驚いて電話されてきたそうです。
普通であれば、お酒にならずに腐造になってしまうような酵母数なのに、ここのお酒は元気に発酵している。この先生も不思議がっていたそうです。
つまり、寄せ集めの兵隊100人よりも、一人のゴルゴ13,ということでしょうか。

竹鶴の石川杜氏と並んで個性の強いお酒を造り出す久保本家さんからは目が離せません。

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