福岡県の地酒(純米酒)
「三井の寿」の銘柄で知られるこの蔵では、数年前にがらっと蔵人が変わりました。前任の杜氏さんが高齢と体調を理由に引退され、新しく赴任された山下杜氏は三十台半ば。彼は以前「菊姫」で、あの農口杜氏から酒造りの薫陶を受けていたそうです。
よく知られているように、農口杜氏は山廃造りに力を入れておられます。山下杜氏も、その技法を継承し、この三井の寿で彼の山廃を造り上げています。地元の山田錦を使った「美田」のシリーズです。
あえて、高精白にはせず、米の旨味がしっかりと溶け込んだ、食中酒として広い支持を受けています。しかし、やはり山廃はお燗にしないと、その良さがはっきり出て来ないようです。井上蔵元も、燗にして食べながら飲むと、やはり山廃のお酒が残ってくる、とおっしゃいます。お酒だけで飲むのなら、速醸の酒でもいいが、食べながら飲むにはやはり山廃、それも燗にして。
また、ここでは自家精米にも力を入れています。共同精米だと、どうしても精米歩合がはっきりしない、という山下杜氏の考えから、精米機を導入し、厳格に精米をします。 そして、米の旨味を酒に引きだすには、あまりにも高精白なものは向いていない、という考えで、美田のシリーズには大吟醸並の精米歩合はしていません。しかし、精米歩合で酒の質を判断される傾向があるため、あえて精米歩合は表示しない、というのが蔵元さんの考えです。これは一つの見識であろうと、私は思います。私たちは精米歩合で酒を選ぶのではなく、飲んでおいしいかどうかで酒を選ぶのですから。
そして平成15byからは杜氏(ここでは酒造技術者という名称ですが)が変わりました。山下さんから、水上さんへとバトンタッチされました。それを心配されたお客さんも少なからずいらっしゃいましたが、蔵へお邪魔して新酒を試飲させていただいたら、そんな心配は吹っ飛んでしまいました。蔵元さんに聞いたら、昨年から実質的には水上さんが酒造りの先頭に立ってこられたとのこと。山下さんは体調を崩されて入院されていたらしいのですが、その時も全て水上さんがやっていたらしいのです。これを聞いて一安心。三井の寿は安泰です。
そして、これは私にとっては特筆すべきことだったのですが、平成13byから、ここでは酒質が、がらっと変わりました。私が最初に三井の寿さんにお邪魔したのは、平成3年頃だったと思いますが、その頃に使っていた井戸の水に戻したところ、酒の味が全く変わってしまったのです。
その頃、杜氏を勤めていた能登原杜氏が作るお酒は、優しく柔らかく、しかも崩れない力強さもありました。それが、何年か経ってから、ちょっと味が変わったな〜と思い始めたのですが、今考えてみると、井上蔵元が、「新しい井戸を掘って、今年からこの水で作っているんです」と話しておられたのを、後になって思い出しました。が、その頃は全く気づきませんでした。能登原杜氏も、どうも思うような酒にならないと頭をひねっていたそうです。そして、体調のせいで、そのまま引退されました。井上蔵元も、「とっさん(杜氏)には悪いことしました。あの時、井戸を変えていなければ・・・」とおっしゃっていたのが印象的です。
よく酒の味は水の味。蔵へ行ったら使っている水を飲め、とは言われるのですが、これほど違う味わいになろうとは思いもよりませんでした。
ちなみに、この二つの井戸の水を工業試験場へ持ち込んで調べてもらったところ、全く同じ成分で、水脈も同じである、と言われたそうです。しかし、実際に出来上がったお酒は全く違う味わい。
「何億円もするような機械で調べても判らない違いを、人間の舌は感じ取ってしまうんですね」とは井上蔵元のお言葉でした。
ほかの蔵元さんにこの話をしたところ、「杜氏が変わるより、水が変わる方が怖いです」とおっしゃてました。やはり、水はお酒の味を決める重要な要素だということを、しみじみと感じてしまいました。
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| 三井の寿 山廃純米 美田 豊醸 |
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| 写真はイメージです。燗どっくりは含まれません |
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山廃らしい味の強さと、柔らかい味わいがとても高い次元でバランスをとっています。山廃造り独特の乳酸臭はほとんどなく、吟香さえ香ります。滑らかな味わいは、時間とともに、また温度の変化とともに、様々な表情を見せてくれます。この美田を飲まれたお客様が一様に、燗冷ましには驚いた、とおっしゃいます。冷やでも充分においしく飲めてしまうのですが、これは是非、燗に、そして燗冷ましにしてみてください。より一層、美田を堪能していただけると思います。 |
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| 三井の寿 山廃純米 美田 にごり |
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| 写真はイメージです。燗どっくりは含まれません |
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| 三井の寿 山廃純米 穀良都
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| 写真はイメージです。燗どっくりは含まれません |
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穀良都というのは、お米の名前です。原産は山口県だそうですが、戦前までは山口から北九州で広く栽培されていたそうです。しかし、鳥取の強力などと同じく、近代的な農業と相性が悪いせいで、すっかり姿を消してしまったのを、井上蔵元が契約栽培で再びお酒を造れる程度、作られるようになったそうです。
美田も穀良都も、どちらも山廃仕込みですが、美田は山田錦を使っています。その米の味わいの違いが現れているのでしょう。美田よりも、やや大人しめの味わいですが、旨味と切れの良さは同等です。美田とは多少違いますが、ほのかな吟香もあり、コクと切れのバランスがよく、ぬるめにお燗をすると、すいすいと飲めてしまいます。
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西鉄博多駅から一時間弱。犬塚という駅に到着します。更に西鉄を行くと、北原白秋で有名な柳川になります。ここら一体は、三潴地方と言われ、昔から日本酒の製造が盛んで、そして杜氏の出身地でもあります。
筑後平野の田園地帯を歩きながらとぼとぼ歩くと、10分ほどで蔵に到着します。 「蔵見学」という看板はあるものの、単なる観光蔵ではありません。それどころか、造りの最中は観光客は蔵内には入れません。それに、観光蔵で、これほどの品質のお酒を造っているところなど、まずないでしょう。 四十台半ばの原田蔵元と、菰方杜氏のコンビはここ数年でさらなる進化を遂げています。私が今、もっとも注目している蔵の一つが、この旭菊です。
数年前、前任の田中元信杜氏が急逝し、一時はどうなることかと思いましたが、田中杜氏の遺志をしっかりと継いで、目の醒めるようなお酒を造り出しています。地元の農家の方と契約して有機栽培された山田錦を使った「大地」、そして「綾花」。純米酒としてはもっとも安い「特別純米」でさえ山田錦を使うという贅沢さ。
そして、どのお酒も、お酒だけでも、食中酒としても安心して楽しめる味わい。派手な香りはありません。しかし、どのお酒も、純米酒としての一つの完成型となっているような気がします。ただし、熟成には時間がかかります。当店のお客さんで、特別純米を二ヶ月栓を開けたまま保存した、という方もありました。しかし、その味わいは筆舌に尽くしがたかったそうです。鷹勇や旭菊しか日本酒を知らない、その方の息子さんは、未だにあの味が忘れられないそうです。
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一昨年から造り始めた純米吟醸です。山田錦と麗峰を50%精白しています。これもまた、旭菊のお酒。なかなか味が開きません。ですが、開けてから一週間〜十日ほど我慢しながら待っていただけば、ぐっと味が乗ってきます。冷やのままなら豆腐や白身魚などの淡泊なもの。お燗をすれば、けっこう幅広い料理に合いますが、あまり味付けの濃いものには向かないかもしれません。 |
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| 旭菊 純米吟醸 大地(有機栽培山田錦50%精白)
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有機栽培山田錦50%精白 写真はイメージです。燗どっくりは含まれません |
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地元の篤農家と契約し、有機栽培された山田錦を50%精白してあります。きれいな味の中に太い酸が見え隠れします。香りを楽しむというよりは、味全体を楽しんでいただきたいです。ぬるめにお燗をすれば、白身の刺し身などは相性がいいですが、、幅広い料理を受け止めてくれるでしょう。 |
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山田錦60%精白の特別純米。開けたては堅いでしょう。丸々三年くらい熟成できれば、いくらか熟成も進みますが、一年や二年ではなかなか熟成してきません。ですが、じっくりと味が開いてくるのを待つのも楽しいもの。開いてきたら、純米吟醸の逸品に変化していきます。充分に味が開いてきたら、是非お燗で。そして燗冷ましもお試し下さい。驚くような味の冴えです。 |
筑後平野のまっただ中にこの蔵はあります。西鉄で博多から一時間弱、三潴駅で降りると、歩いて数分で蔵に到着です。旭菊酒造にも近く、故田中杜氏は、この蔵の末永杜氏の良きライバルであり、良き先輩だったそうです。この末永杜氏は、祖父、父と三代に渡ってこの蔵で杜氏を勤めておられます。私たちが酒造りのことを伺っても、親切に色々教えてくれる方で、柔和な顔つきですが、蔵に入ると顔つきが変わります。特に吟醸の時期になると、蔵の近くの自宅に帰っても、夜中に見回りに来てしまうそうです。 蔵元の森永さんは醸造学科出身の理論家で、この二人が車の両輪となって試行錯誤。新たな境地を目指して突き進んでおられます。
蔵の規模としてはけっこう大きいのですが、近いうちに全量純米酒にしたい、というのが蔵元さんの考えのようで、私たちも期待しています。 なお、ここでは道路を挟んで清酒蔵と焼酎蔵があり、焼酎でも素晴らしい逸品を造り出しています。(焼酎のコーナーへ) |
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| 独楽蔵 円熟純米吟醸 玄 |
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| 写真はイメージです。燗どっくりは含まれません |
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福岡の杜の蔵さんの「独楽蔵」シリーズから、今回は「玄 2000年」をご紹介します。
先日の『燗酒楽園』でも大変好評でした。2000年というのは、もちろん2000年古酒ではありません。(誰でも分かるかな)西暦2000年に造られたお酒を、一定の温度(15〜16度)で3年熟成させたものです。
やっと、味が整いました。以前、このお酒を試飲した時は、う〜ん、なんかバランスが今一つだな〜・・・なんて思っていたのですが・さすがです末永杜氏は。遥か先のことを見据えていたんですね、これは。私は、この味は予想できませんでした。これほど、味わいが整ってくるとは・・・
ちゃんと造られた純米酒が熟成すると、このようになる、という見本のようなものでしょうか。
ただし、華やかな香りをお求めの方はやめといた方がいいでしょう。少し熱めにお燗をしてからちょっと冷まして飲んでみて下さい。純米酒のお燗の旨さを、きっと実感していただけると思います。
冷やおろしは、今年の春先に搾ったお酒を秋まで寝かせて、この時期だけ限定出荷されるものです。「玄」のきっちりと熟成された味わいとはちょっと違うフレッシュさが魅力です。なお、冷やおろしは季節、数量限定ですので、御希望の場合はお早めにお願いします。 なお、9月16日から出荷されますので、発送は、それ以降となりますので、あらかじめ御了承下さい。
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