この蔵は山形県鶴岡市内、大山地区にあります。大山杜氏、という名がある位、この地方では酒造りが盛んでした。しかし、現在残っているのは4軒。その中でも一番小さく、そして一番古い歴史のある蔵です。
羽越本線の大山駅を降りて町中をぶらぶらと10分ほども歩くと、「志ら梅」という看板のあるこの蔵に到着です。外から見たら、ただのしもた屋に見えますが、蔵の中に入ると、歴史のある旧家であることは一目瞭然です。分厚い漆喰の白壁に覆われた蔵が立ち並んでいて、現在ではここはお酒の冷蔵庫として使われています。 造りの規模からすれば広くて動きやすそうな蔵内に、これまた大きな甑があります。
この蔵で造りの先頭に立つのが、地元出身の安在正一杜氏。五十台半ばにして、上原先生から名人である、とのお墨付きが出るくらいの腕前です。 ここの酒は、とにかく渋い。絞ったばかりの時は焼酎かと思うくらい渋く、堅いのが特徴です。したがって熟成には時間がかかります。1年ではどうでしょう。理想を言えば2〜3年は熟成させたいものです。
よく「秋あがり」という言葉が使われますが、ここの酒に限って言えば、翌年の秋上がりがいいようです。 しかし、一度飲んだら忘れられない味。凛として、ほのかな吟香。口に含めば、たっぷりの吟味に酔いしれます。温度が低い時にはさほど感じなかった吟香も、品温が上がってくると、心地よく漂ってきます。 そして、曇り一つ無い味わい。
精米歩合50%台の中吟として、これほどの逸品は、私の知る限りでは、そう多くはありません。 まだ若く、これからも長く安在杜氏のお酒が飲めることは、一人の酒好きとして実に幸せなことだと思います。 |